無題ドキュメント 96
ざわめく心
祭り会場は人の波でごった返していた。
 
昼過ぎからステージの上で、地元有志のバンド演奏やカラオケ大会に早食い競争、神楽に太鼓の競演などが行われ、それらを楽しむ人々が入れ替わり立ち代わり訪れている。
いよいよ日も傾きだすと狐火行列に参加するメンバーが、思い思いの衣装を着て本部テントに集まって来る。
「提灯と狐面は行列終了後に回収しま~す」
「代表の方はお弁当を取りに来てください!」
「・・・ルート確認・・・・もう一度・・・しま~す!」
琥珀も湧泉音もてんてこ舞いだ。
私は制作進行が手一杯で、2人のカバーどころの話じゃない。
「ああいやそれはこっちの担当じゃないんっすよ!」
「迷子?・・・・ああ天花・・・ḾCさんに・・・メモ・・・渡して!!」
琥珀、湧泉音・・・ごめん!
私は私で忙しいんだよ。
「草加さん!マイクチェックオッケーです!」
「天ちゃん!そっちつないでくれる?」
          
「解りました!!あっ迷子のお知らせあります!」
   
陽が落ちると同時に行列の先の御神灯が灯った。
いよいよ狐火行列が厳かに始まる。
途中からヘルプで来てくれたサッチン先輩に後をお願いして、私達はそれぞれの行列に加わった。
夕べも遅くまで狐面や鳴り物の仕分けに追われ、テンションの高いままここまで来てしまった気がする。
最も遅くなった原因の半分は、自分達が被る狐面はどれが似合うか?と言った実にたわいもないことだったけれど。