無題ドキュメント 52
2人の歌
                           
「ゆねパパって近寄りがたいイメージがあるけど、そんなに分からず屋でもないと思うけどなあ」
「・・・・・シッカや琥珀には優しい・・・・・特に琥珀は・・・・」
「琥珀は?」
「・・・・・音楽の才能・・・・あるから・・・・・」
「そりゃ、琥珀は将来作曲家?って回りの大人が期待するくらい、小さい時からピアノのセンス抜群だけど」
だけど・・・湧泉音。貴方は覚えてないよね。
うんと小さい頃、おもちゃのピアノで琥珀が適当に曲を奏でた時
貴方もそれに合わせて歌い出したんだよ。
その時のことを私は今も憶えてる。
凄く温かくて、凄く心地よくて、何かに包まれているようなふんわりとした優しい気持ちになれたの。
空気中を光の精が舞ってるみたいに、キラキラした何かが私の心を捉えて離さなかったの。
窓辺には沢山の鳥たちが集まって来て、大人が不思議がってたけど、全然不思議なことじゃないの。
それは貴方と琥珀の力なんだって思ったから・・・・
    
2人して学園祭シーズンは引っ張りだこで、ステージに出る前
アジェ・クオド・アジス (頼むぞ)
 
って言い合ってたよね。
あとからそれはラテン語だってわかったけれど・・・・・
何を言っているのか?どういう意味なのか?随分長いこと教えてくれなくて、マネージャーとしては悲しかったな。
私はてっきりそのまま2人のデュオが続くものだと、勝手に思ってたんだけど。
芸術大学に進み、そこで貴方が選んだのは彫刻だった。
もっとも、その頃私は九州に引っ越してたし、琥珀は琥珀で本格的にミュージシャンを目指すことになってたし。
だから高校を卒業した私は、そのまま実家の手伝いをすることにしたんだ。
だって、琥珀のことも湧泉音のことも私なりに応援したいじゃない?
いつか、琥珀の舞台の演出を湧泉音がやって、私がオペレーターをするの。
当然、湧泉音はゲストで歌わなきゃダメだよ。
そして、幕が開くその前に2人であの言葉を交わしあうの。
  
その時は私も側にいるからね。