無題ドキュメント 92
人生の罰ゲーム
私はあれから生まれ変わりに関する本を色々と読んではみたけれど、どれも本当のような嘘のような記述ばかりだった。
中には第二次世界大戦中、ドイツに生まれたユダヤ人の兄弟なのか?恋人同士なのかはわからないけれど、その片方に殺された記憶を持って生まれ変わった男性の話があった。
片方は驚いたことに近所に引っ越してきた女性として生まれ代わっており、偶然知り合った2人は言葉を交わすうちに前世の記憶がハッキリ蘇ったそうだ。
自分を殺した銃がIVER JOHNSON と言うことも苦痛と共に理解したそうで、それは決して幸せなことではなく、今の人生は罰ゲームのようなものだと語っている。
          
それでは、私達の人生も罰ゲームなのだろうか?
パパは良く言う。
この世で生きて行くことこそ修業なのだと。
「修道院に入ったり出家したりしなくても、普通に正しく生きることこそが、最も神に近ずく行為なんですよ天花」
神智学を学んでいたパパの言うことは時に難しい。
「ヒンズー教や仏教ではカルマと言うものがあって、それを消化していく為に人は何度も生まれ変わるそうだよ。そうするうちにいずれ魂は昇華していくものなのだろうね」
そんな話をする時、ママは傍らで静かに考え込んでいる。
さっぱり解らなかったパパの話も、今回のことで少し解る様になった気がする。
きっと神様は前世で不幸だった魂を憐れんで、この世に送り返したのではないか?と思うのだ。
翔子さんの生まれ変わりだと言う証は何もないけれど、生前一番彼女のことを想っていたママの娘として、私はここに居るような気がする。
たくさんの笑顔と幸せを得る為に。
           
「ハアア~夏もいよいよ終わりか。今日のは階段の上り下りがきつかったなあ。こういう時24時間やってる温泉があるってのはいいよな」
「よくぞ別府に住まいけり!ってね・・・ゆね?今日はもう絵付けはしなくていいよ」
「・・・・うん・・・・でも・・・あと少し・・・」
「やるなら俺も手伝うぜ?」
「2人とも随分素敵に描けるようになったじゃない?」
「なんつたって感性の塊だからな俺達は。しかし、見事に3人それぞれの個性が狐面に出てるよな」
「ホントよね。凛々しい感じのは琥珀で、神秘的なのはゆね。」
「・・・・シッカのは・・・優しい・・・」
「そうか?優しいつうよりトボケた感じがするけどな?」
「こ~は~く~」
「あっいや褒めてんだぜ。いいじゃねえかよ、ひょうひょうとした感じでつかみどころがないつうかさ」
「褒めてるようには聞こえません!まあいいけど。それぞれ3グループに分かれて行列するから何処かに違いがないとね」
            
「ところでお前さあ、俺らにチームリーダーさせて大丈夫と思ってるわけ?」
「思ってない!大丈夫とは言えないけど、まあ他のスタッフもいるしトランシーバーで連絡取り合うし」
「ははあ、俺達じゃあまり役に立たないから行列させようって魂胆だな?」
「大当たり!!当日は結構混乱しちゃうから、現場の進行はベテランじゃないと無理なのよ」
「・・・・でも・・・楽しそう・・・・」
「絶対楽しいって、色んな楽器をガチャガチャ言わせて歩くんだよ?面白くないわけないじゃない?」
「鳴り物かあ、賑やかでいいな。楽器を鳴らすのは存在感を出す為か?それともなんだクマ避けならぬ車避けか?」
「ううん?何だろう?多分・・・魔除け?音の出るものは魔が除けるって言うから」
「へえ~そうなんだ。まあ縁起もんだな」
「・・・狐の・・・嫁入り・・・みたい・・・」
「何だ?そりゃ?」