小さき者の死 |
どうか、この子たちが生まれ変わって、暖かく幸せな人生をおくれますように。神様、どうかお願い。私が、あげられなかった沢山の笑顔を、未来を。 お願いします。神様・・・・・・ 「子猫だ」 後ろに湧泉音を乗せ、ゆっくり走っていたおかげで琥珀のバイクは無理なく止まった。 僅かに後から来たシッカの目に、横たわる小さな塊が写る。 琥珀と湧泉音はバイクを降りて行くが、シッカはカラスがついばもうとしているその塊に近づくことが出来ず、ハンドルを持つ手をガタガタ震わせながら、2人が首にかけたタオルをはずしてその子猫をそっと包んでいる姿を見ていた。 「ごめんナ 汗臭いタオルで」 「・・・・綺麗・・・じゃない・・・・けど」 タオルにくるまれたそれはまだ温かい。きっと跳ねられたばかりなのだろう。 「いやあねえ 野良ネコなのに」 「汚いわ 困ったものよねえ」 近所の人達だろうか。眉をしかめて聞こえよがしに囁いている。 途端に全身から何かがほとばしるように、シッカは思わず声を荒げて叫んでいた。 「うるさい!!命を何だと思ってんのよ!汚いって何よ!人間の子供だったら大騒ぎするくせに 野良猫だからって知らん顔はないでしょ!!」 言い始めたが最後、怒りは収まらず一層全身が震えだす。 「何よ!一体何だって言うのよ」 「シッカ!!」 琥珀に腕を掴まれてもシッカは地団駄を踏み叫び続けた。叫びながら泣いた。 子猫を跳ねた運転手も許せない。見て見ぬふりする大人も許せない何故?何故、こんな小さな命が奪われるんだろう。 大人達がバツの悪そうに去って行った後もシッカ自身が驚くほどに、悲しくて悔しくてどうしようもない感情があとからあとから溢れてくる。 一通り感情を吐き出した後、琥珀がいつになくやさしい口調で呟いた。 「この子猫にとっちゃ、不幸な出来事だけど、こうやって悲しんでくれるヤツがいるだけ良かったんじゃねえの?」 「・・・・人・・・猫・・・犬・・みな同じだよ・・・」 「ごめんね2人とも。でも何か悲しくてやりきれなくて」 「・・・・・・かわいそう・・・・」 「こんなに小さいのに、ボロ雑巾みたいになっちゃって」 「まあ な。でも考えようじゃね?この先もうこの子は飢えることも寒さに震えることもないわけだし」 「・・独りぼっち・・・・じゃない・・・さみしく・・・ない?・・」 命の重さに大小はない。だけど、生まれてたった数か月で命を落としたこの子猫は、何の為に生まれてきたんだろう。 よく新聞やニュースで幼い子供の事故死を見かけるが、人間と動物と言う違いだけだ。今、目の前にある残酷な事実に何ら変わりはない。 神様が目の前にいたら聞いてみたい。 何故?こんなことをするんですか? |