ノラネコ |
「・・・・いいよ・・・・・・」 「出来れば・・・・傷つきたくない。苦しい思いや辛い思いはしたくない」 「そりゃな。でも逃げたって何も変わらねえし、自分が同じところにいるだけで成長しねえじゃん。生きるって確かに辛いことの方が多いだろうさ。でも、一歩進んだその先に光があると思いたい。もしかしたら、それがさっき言った神のサインってものかもしれねえし」 「どうすればいいんだろう、解らなくなっちゃった。」 「目の前にあることに囚われて、がんじがらめにならなきゃいいんじゃねえのかな?」 「でも、もっと辛いことが起きるかもしれないんでしょ?」 「シッカ・・・人間ってさ勝手なもんで、過去の苦しみに比べたら今、目の前にあることなんて大したことないって、頭じゃ解っててもさ、心が否定するんだよ今の方が辛いって・・・よく言うだろ?喉元過ぎれば熱さ忘れるって」 「それって・・・・?でも本当に過去の苦しみより、目の前のモノの方が大きかったら?乗り越えられなかったら?」 「生きてりゃ何とかなるって。とにかく頑張れよそれしかねえだろ?」 「頑張るってどう頑張ればいいの?」 私が不登校になりかけた頃みたいだ。 毎晩、琥珀にメールして今みたいなやりとりをしていたっけ。 そのまま高校に行き続けることに意味を見いだせず、かと言って何がしたいわけでもなく、毎日心が漂流しているようだった。 今は少なくとも目標がある。生きていく道しるべとも言うべきものを手にしている。 あの時の空っぽな状態に比べたら、今のほうがはるかに充実しているのは解っているけれど・・・・ 「普通に生活することが大事なんじゃね?辛いことや苦しいことが通り過ぎるまで、淡々といつもの暮らしをする。これが案外難しかったりするんだよ」 「琥珀は・・・そうやって乗り越えた経験あるんだ」 「まあな。毎日精一杯働いてそんな中で人に出会ったり、別れたりって言う単純なことの繰り返しでいいんじゃねえの?とにかく自分が頑張れることをすりゃいいさ。」 「それが一番難しいと思う」 「ムリをしない。フリをしない。自分らしく。そう言った意味じゃユネが一番自然体かもしれねえけど」 「・・・・・そうかな・・・・・」 「野良猫みたいなとこあるじゃん。傷ついたらじっとうずくまって治るのを待つみたいなさ」 「・・・・・ノラ・・・ネコ・・・・?」 「ゆねがそんなにシャープなものかな?」 「シャープ?つうより本能?何か野生の感で動いてるみたいじゃん。ユネって」 「・・・・・・よく・・・わからない・・・・」 「上手く言えないんだけどな。臆病なくせに大胆つうか好奇心旺盛つうか・・・・でもめんどくさがりだしな」 「それの何処が野良猫なのよ?」 「なんとなくさ。マイペースなところかな?」 「どっちかって言うと飼い猫っぽい気がするけど・・・」 「・・・・・人間・・・・だけど・・・・」 「そうかあ?尻尾生えてんじゃねえの?お前」 |