無題ドキュメント 83
天花とシッカ
「やあ~いシッカロール!!天花粉!!変な名前!あっち行けよ!外国語しゃべれない外国人~」 「天花だもん!!天花粉じゃないもん!!」
「へえ~何か言ってるぜこいつ。聞こえねえよ。あっ、お前の仲間が来たぞ。や~い、ヘンテコトリオ!!」
「うっせえな」
「・・・琥珀・・・石・・・投げちゃダメ・・・」
「大丈夫か?天花?ケガしてないか?」
「うん。大丈夫!!あんな奴らになんか負けないもん。ただ悔しいだけよ。シッカロールとか天花粉とか!!」
「俺だってこないだの社会科の時間から、化石男とかいわれるんだぜ!ったく。」
「・・・雪?・・・だよね?・・・天花って・・・」
「ゆね、すごいね。ママの話覚えてるんだ?」
「・・・うん・・・天花粉も・・・雪のこと・・・だから」
「もう~そこで傷をえぐらないでよ~天花粉もシッカロールもムカつく~」
                        
「じゃあ、シッカでいいじゃん」
「シッカ~???何それ??」
「・・・いい・・・かも・・・」
「よしっ!決まり!俺達3人だけの秘密だ」
そうやって指切りげんまんしたっけ。昔から琥珀は何か約束するたびに指切りげんまんをしたがる。
「あの頃は琥珀のこと女の子みたいだって思ったよ」
「そうか?指切りげんまんが、か?ずうっと昔からそうだからな」
「それも面白い話よね」
「んん?何かこう果たせなかった約束とかあったら嫌じゃん。俺口約束嫌いだし・・・不安になるんだろうな」
「何が?不安なの?」
「約束することにかな?誰かと何かを約束するって凄く重く感じるんだよな。元々束縛されるのが好きじゃないし、その約束を守る為に自分の時間とかエネルギーを使うわけじゃん?」
 
「何だか我がままに聞こえるよ。それって自分の為にしか時間もエネルギーも使いたくないってことになるよ?」
「そういう意味じゃないんだけどな」
            
このところ、シッカは夜遅くまで創作している。これ幸いと2階では毎晩、琥珀やもよこ、そしてシッカが上がってくるまで眠そうに待っているまろざらしと宴会になってしまうのだ。
但し、シッカにきつくお灸を据えられて以来ノンアルコールで盛り上がるのだが。
・・・・・妖怪大集合・・だ・・・
睡眠不足で少々痛い頭を抱えながら湧泉音は、それでも毎日が今まで感じたことのない充実感に満たされていると思った。
毎晩琥珀と語り合い、日中は汗まみれになって働き、休み時間にはシッカの傍らで、彼女の邪魔にならないよう創作を見ている。
ここでは皆優しい。
ハーフだからと言って苛められたり、遠巻きに噂されたり、何かを無理強いされることもない。
たまに、シッカから大学はどうするのか?とか何故?彫刻を選んだんだ?とか昔の様に歌えばいいのに?とか言われるけれど。
それ以上、追求されることはない。
シッカなりに気を使ってくれているのだ。
それにしても、自分はいつから歌わなくなったのだろう?